アンドリュー・S・グローブ『パラノイアだけが生き残る』
インテルの元社長の本。もうだいぶ昔の本と言えるけど、戦争が起こったりパンデミックが起こったりするいまの時代にもぴったりの内容だった。
ひとつのバスケットにすべての卵を入れて、そのバスケットから目を離すな。
この本で一番印象に残ってる言葉はこれかな。
日本がつくるメモリが安価で性能が良すぎたので最終的にインテルはメモリ事業から手を引いてマイクロプロセッサの会社に生まれ変わった。しかしその時の PR 戦略で一般の消費者に向けて「インテル」のブランドを大きく売り込んだ結果、ほとんどの人は影響を受けないようなほんの些細な CPU の欠陥が会社全体の信用を傷つけるような事件に膨れ上がった。
チャップリンは最後まで無声映画に固執したという話も面白かった。
まあでも、後から振り返ってあれは間違っていたというのは簡単で、この本は、そうならたいためにあらゆることに対してパラノイドであれといっている。インテルの社長くらいの立場の場合は、常に中間管理職の声に耳を傾けて、現場で起こっている最新の情報に触れなくてはいけない。
(どうでもいいけど原題は _Only the Paranoid Survive_ なのでパラノイアじゃなくてパラノイド。パラノイアは心配性という人の性格で、パラノイドは心配性の人という意味。しかも単に心配していればそれでいいのかという話でもなくて、the Paranoid しか生き残らないと言っている。)
ぼくは逆にそんな高い立場になったことがなくてずっと現場にいるから、上の方の人が何も知らずに時間を過ごしているのが当たり前に感じられる。でもそれだとそのうち会社ごと潰れてしまうんだよな。
同じ状況にあっても人や立場によってその時の最善の対策も変わってくるし、最終的にはあとで答え合わせをしてみないとわからないところもあるけど、それでも下手にリスクを分散するような真似をするのは最悪の結果になることが多い。
インテルをメモリ事業から追い出した日本のメモリ技術もいまでは完全に衰退してしまって、生き残るために台湾企業を日本に誘致したりしてるくらいだから、みんなももう一度この本を読んでみるといいと思う。