フレデリック・ラルー『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』を読んだ。
個人的に会社で働くことに対して感じていた疑問にことごとく答えてくれた。
その少し前にジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』を読んで、ここに紹介されている会社は働く場所としては理想的だと思ったけど、しかしこのような会社を作るのはあまりにも難しいのではないかとも感じていた。
ゲーム業界では唯一 Valve が紹介されていたけど、ほんの数行だけだった。他にティール組織の方法を取り入れているゲーム会社はないのかな? Supercell はどうなんだろう?
ぼくがこれまでに感じていた疑問は、特に日本では、会社は従業員を信頼しないことを大前提に置いていることだ。勤怠管理や進捗管理や朝礼やなんかそういったもので常に従業員を監視していないと、放っておくと怠けると思われている。
何年か働いているうちに少しずつ他の社員や幹部から信頼を得、ある程度出世してやっと一定の裁量を得るというようなことを、転職するたびに繰り返さなくてはいけなかった。
ドイツで働いたときは、その点はずっとマシだった。上司は二言目には自分が正しいと思ったことをやれといってくれた。勤怠管理に関しても、どちらかというとちゃんと休みを取っているか、長時間働きすぎていないか、について人事部が目を光らせているという感じだった。
ぼくが会社で働くときに一番イヤなのは上司がいるということだった。ドイツで働いているときの上司はとても優秀で部下を信頼して人格的にも良い人だったけど、それでもはやり彼の上司やそのまた上司、あるいは本社の偉い人から言われたことには従わなければいけないし、理不尽とまでは言わないまでも、「マジで?」と思わずにはいられないような指示もごくまれにはあった。
ティール組織ではこの上司部下の関係を撤廃する。みんなが幹部みたいなもので、正しいと思ったことならなんでもその人の責任で決定することができる。だれも他の人に仕事を強制することはできない。このおかげで常に現場レベルでは改善が行われて、厳しい管理主義のもとで経営されていたときに比べて飛躍的に売上が伸びたケースが多いらしい。
これは一見寝言のように思えるけど、トヨタが実践し、他の自動車メーカーにも波及したトヨタ生産方式はこれに近いんじゃないかと感じた。
ティール組織の方法を実践している会社は、自分たちのやり方を喜んで他の会社にも教えてあげるそうなんだけど、トヨタも他の自動車会社からよばれたら喜んで工場に人を送ってカイゼンの具体的な方法を教えて回ったらしい。
ティール組織の考え方は単なる経営の手法にとどまらず、人類の意識の発達段階というような、壮大な、あるいはちょっと胡散臭いスピリチュアルな話につながっていく。しかしこれも、本を読み進むうちにだんだん納得できるようになってきた。最近よく目にするようになったマインドフルネスなんかもその流れの中でとらえられるんじゃないかな。