マイケル・D・スミス、ラフル・テラング『激動の時代のコンテンツビジネス・サバイバルガイド』
かなり面白かった。NETFLIX がなぜここまで大きく成功したのか? それは彼らがデータを持っていてそれに基づいて配信するコンテンツを定め、さらにオリジナルのコンテンツ制作まで始めてしまったから。
注目に値しないと思われていたネット動画配信サービスが、従来の巨大なメディア会社よりも多くの情報を手にすることができ、それをビジネスに活用して実際に利益につなげることに成功したのは、現代のすばらしいサクセスストーリーだ。
この本は、NETFLIX のような会社になぜそれが成し遂げられたのか、そして従来の会社になぜそれができなかったのか、がとてもわかりやすく書いてある。
でもこの本は別に NETFLIX だけを扱ったものではない。そのほかにもたくさんの事例が紹介されているけど、その中でもカジノのチェーンであるハラーズの話が印象に残った。
ハラーズの CEO フィリップ・サトルはハーバード・ビジネス・スクールの教授を引き抜いて、顧客の行動を解析させた。
しかしさらに重要なことが判明した。顧客を個々に見ていくと、最も収益性の高い顧客とは、伝統的に「クジラ」と呼ばれる大金を賭ける客(業界全体がこうした人々に焦点を当てていた)ではないことがわかったのである。
それまでは各支店ごとに顧客情報を管理していたけど、それを全部まとめて本社でまとめることで、たくさんの情報を得たけど、その分各支店のマネージャーたちからは大きな反発を受けた。
顧客マーケティングを一元管理するようになってから、カジノの管理者を務めていた従業員の4分の1が同社を辞めていった。
データを活用して売り上げを伸ばすというのは、口で言うのは簡単だけど、実行するのは難しい。でも、それを本当に実行した時のリターンが計り知れない大きさになることもある。
以前読んだスティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』にも出ていたけど、映像配信の世界でもネットの海賊行為が大きな役割を演じている。ぼくは一応コンテンツを作る立場の方にいるので、著作権を尊重して海賊版には触れないようにしているけど、でも強い信念を持って海賊行為をする人たちには一定の敬意を持っているのも確かです。彼らがいたからこそ、NETFLIX が成功し、好きなだけ自分のみたい映像コンテンツを楽しむことができるようになったとも言える。